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2024 .03.29
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けっこうあちこちでリンクされている動画なので見た事のある人も多いかもしれないけど、これは海外ドラマの制作におけるキーイング(ブルーやグリーン一色のバックを切り抜いて合成する処理)の実例を集めたもの。日本でもヒットしたドラマが多いので、まったく気付かずに本編を観ていてびっくりした方も多いかと思う。

一番特徴的なのは、キーイングの処理が使われているのは「現実でも十分撮影可能」なシーンが多いという事だ。合成というと恐竜が出てきたり、宇宙を漂ったりという画面を連想するが、ここではあくまで「必要なカットを得る」ための手段としてさりげない活用がなされている。

動画系の撮影に参加した事のある方ならわかると思うが、「ごく当たり前の風景」を撮影するのはものすごく大変な事だ。まず天気はこちらの思惑などかまってはくれないし、街中であれば道路使用許可や交通規制なども必要になる。予算はもちろん、放映スケジュールが決まっているTVシリーズでは、文字通り死活問題だ(特に米国では、役者以外にスタッフのユニオンの力も強いから、無闇やたらと「待ち」の時間も増やせないのだろう)。

ツールは、それを「使いました!」という事が宣伝のタネとなるうちはまだ未熟。それが使われている事を予想だにしなかった部分にさりげなく使われるようになって、初めて一つの成熟点と言えるようになる。そして成熟点に達して初めて「手法としてのローファイ」を使う事が出来るようになる。

音楽で「ローファイ」という言葉が流行ったのはもう十数年も前だけど、その頃はCD並の音質のサンプラーがアマチュアでも十分手に入る価格となり、打ち込みオンリーでも「リアルな生音」を比較的簡単に入れられるようになった時期だ。そうした時期に、1〜2世代前の音質の荒いサンプラー(テイ・トウワなんかが使ったSP-1200が有名)を意図的に使う手法も台頭して、今やそういった意味での音質は、所有機材などではなく「作家性として」使い分けるものとなっている。

今、バーチャルボーカルの分野は(異論はあるだろうけど世間の認識として)「初音ミク」が代名詞的な存在であり、それを使っている事を商品価値とする事も(まだぎりぎり)可能な段階だ。これが例えば、バーチャルボーカルがCMソングなんかに(全くそれと気がつかない形で)使われる段階になったら、どんな状況が生み出されるだろう。現段階のVOCALOIDやUTAUの表現力の限界を、逆にものすごい武器として使える状況はいずれ間違いなくやってくる。

そういった成熟を生み出すのに最も必要なのは、「100の勝ち馬に乗る」行為ではなく「1つのチャレンジ」だ。今のように社会全体の停滞が囁かれる時期というのは、言い方を変えれば「失敗するチャンス」とも言える。皆がイケイケの時に一人失敗するのはちょっと辛いけど、全体が「失敗して当たり前」という意識になっている時期こそ、トライ&エラーで経験値やデータをためて行くにはもってこいの時期だ。

これは「ポジティブシンキング」とかそういうちょっとアレなもの(笑)ではなく、こんな好機に何もしないのはとっても損な事ですよ。
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古本の資料的価値についてTwitterでつぶやいていたら、ふと国会図書館の「献本制度」の事を思い出した。

献本制度とは「日本国内で発行した書籍は、資料として国会図書館に一冊よこしなさい」という制度。強固なものではないのでもちろん抜けも多々あるだろうけど、これにより一般的な書物の大部分は資料としてアーカイブされている形となる。同人誌なども受け付けているので、作っている人は是非自分の活動の記録としても献本しておくと良い(後世、どんな貴重な資料になるかわからない)。

さて、本題に入ると、iPadやKindleの登場で急速な普及が喧伝されている電子書籍。これからは電子書籍のみで発行される作品も大幅に増えるだろうけど、そうなると献本制度はどうなるんだろ?という疑問がわいて来た。ある種、場所もとらないしアーカイブには最適な形だけど、じゃあファイル形式は?バックアップ体制は大丈夫?そもそも受け付けているの?ど疑問が付きない。

ちょっと検索してみたら、一応こんな取り組みはしているようで、さすがにノーマークではないらしい。また、出版物全般という事で少しニュアンスの違う部分もあるけど、閣僚のこんな発言も出てきた。(←余談だけど、このリンク先記事の2ページ目の出版社の権利保護の部分はなんかすごくチグハグな事言ってないかな?書籍コンテンツの価値は、版下的なデータじゃなくて内容そのものにあるのに)。

制度を作る上でもなんでも、普通のWebページやblogなんかと「電子書籍」はどう違うのか?ってのが結構大きな問題になりそう。個人的な見解では、サーバ上に置かれた複数のパーツから成り、常に改変の可能性がある動的なものは書籍とは呼べないと思う。書籍と呼べるものは、版ごとの改訂はあっても、ある時点の一版の内容が固定された静的なコンテンツである必要がある。そうしたものでなければ、アーカイブ資料としての意味も半減してしまう。

おそらくどんな形式で電子書籍を編集しても、PDFなら手間をかけずにコンバートできると思うので、とりあえずPDFでいいから国会図書館にPDFでの電子書籍献本の仕組みを作るべきではないか。でないと、何年かかけて仕組みを整備するにしても、それが出来るまでの間に資料の空白ができてしまう。それも、メディアの大転換という歴史上非常に重要な一時期の資料が。

一つ不安なのが、官公庁系のデータベースで出来の良いのをあまり見たことが無いという事。国家事業だから国内企業に、と言いたい所だけど、Googleあたりに良いのを作ってもらった方がよほど国益にかなうとしたら、なんとも皮肉な話だ。

今日もちょっと昨日の続きっぽい事を少々。

例えばUSBって、言うまでもなく機器同士のデータの送受信のために作られた規格だけど、最近は弱電デバイスの電源供給規格として急速に広まっている。これでようやく携帯の充電器も統一されそうだし、望むらくは、煩わしいモノの殿堂「ACアダプター」の根絶へと繋がってほしい。

いきなり何が言いたいかというと、道具というものは、使う人がひらめいた使い方がやがて「正解」になってしまう事もある。UTAUのイベントを企画しだした頃に、何人かの方から「UTAUはDTMツールとしてどうか?」という問いかけを受けた事があるが、(UTAUはあまりに立派に音楽ツールだとして)個人的には何らかの形で音にコミットできるソフトは、全部DTMソフトの因子を持っていると言って過言で無いと思う。

コンピュータ・ミュージックにしても、コンピュータ・グラフィックにしても、商業分野でのツールとして使われると、ある程度の体系化されたノウハウが構築され、それを習得する事に価値が生じてくる(私自身も、そうしたノウハウを他の人にレクチャーする事を生業の一部とさせて頂いているし)。だけど、例えば「小麦粉」はパンの生地にもなれば、うどんにもなれば、天ぷらの衣にもなるように、一つのツールや素材の答えが一つだけなんて事は、特に表現行為に関わる分野では絶対に無いはずなのだ。

現在のパーソナルコンピュータ、言い方を変えれば「私的なコンピュータデバイス」は、その登場期とは、形や性能よりも「存在の意味」自体が変化して来ている。多分自分自身は、今まで自分の中に蓄積して来た旧来の体系に、これからもずっと縛られ、そしてまた武器にもして行く事になると思うが、また同時に新しいパラダイムの方に足を突っ込みたい欲求もふつふつとわいている。

そういう事を…なるべく不真面目な雰囲気でやってみたいものだ(^^;)。
さて、毎月8日は忘れちゃいけないDTMマガジンの発売日。自分の関わったページは当然事前に見ているけど、他の先生方の記事も今になっても非常に勉強になる事が多いので、毎回届くのを楽しみにしている。

今月の個人的な目玉は、メインのDAW特集で平沢栄司さん、船橋識圭さんとの座談会に参加させて頂いた事。大先輩方と並んで企画に加えて頂き、まさに光栄の極みといった所(写真を見て、一番若手なのに一番額が後退してるとか余計な事を思わないように)。

今回は、DAW、及びDTMの歴史とか現状について各自の経験なども交えつつ(秋葉原のルノアールにて(笑))長時間語り合ったのだけど、誌面に載っている以上にすさまじく濃い一時となった(誌面も、けっこう細かい級数で6ページもあるし(笑))。「DTMって、結局何?」という定義には、正直我々も(世界中の誰も)「絶対の正解」を持っているわけではないんだけど、話題は多岐にわたりつつも、これからDTMを始めたい人、始めたばかりの人にも多くのメッセージを込めた内容になったと思うので、読んで頂けたら大変嬉しい。

ちなみにDAW特集のメインは、各DAWのエントリーモデルのレビュー。私も、以前連載も書かせて頂いたり何かと縁の深い「Music Maker2 Producer Edition」のレビューを書かせて頂いた(Music Makerは“廉価版”ではなく、それ自体が独立したブランドだけど)。今回は「向いてない使い方」や「買い足し等をした方が良い部分」などマイナスの要素もきちんと示した上で、初心者向けのみに留まらないこのソフトの「オイシイ部分」も書く事ができたので、かなり参考にして頂けるのでは、と思っている。

あと、忘れちゃいけない「フリーウェア・コンシェルジュ」。こちらではオススメのリバーブプラグインをご紹介している。こちらも、これらを揃えておけば当分不足の無いラインナップをご紹介できたので、是非ご参考に。

あと、一つ先の企画の告知を。数号先から、付録DVD向けに「効果音素材」を(毎月100数十個位)作る事になり、現在準備を進めている所。どんな素材を収録したら良いか編集者さんとも相談中なのだけど、もし「こんな効果音があったら嬉しい!」というようなリクエストがあったら、是非ここのコメント欄にでも書き込んでください。

本日発表された、サーバ上のエフェクトやシンセといったソフトウェアをネット経由で利用するヤマハの新技術「クラウドVST」。いやあ、絶対こちら方面の動きはあると思っていたけど、いよいよ動き出したなという感じがする。

実は、今うっているDTMマガジン3月号の「フリーウェア・コンシェルジュ」の特集では、DTM用フリーウェアでこの10年程を振り返るという企画を書いたのだが、その中で「未来予測」的なコーナーも作っていて、そこでWebベースのDTMソフトの普及を予測していた。「どうだい、俺の言った通りだろう!」と自慢する気は少ししか無いが(爆)、いや、今のコンピュータ系全体の流れから行くと既定路線と言っても良い。

上のリンクのITメディアの記事でも言ってるけど、こういった技術が出てくると「1日だけ使う」といった、言わば「レンタル」に近い使い方が出来るのが魅力だ。元々(というか今も)ハードウェアの機材は、高価なものを何でもかんでも持っている必要はなく、録りとかトラックダウンなど必要な段階で必要な機材をレンタルするのが当たり前の話。しかし、それらがソフト化された後は「レンタル」という形が取りにくいので(また、価格も下がったので)プラグインは使用頻度の低いものもずらっと入れておくケースが出てきた。

しかし、例えば定番の音圧アップツールのWaves L2なんかは、収録されている一番安いバンドルでも十数万円。しかも、バンドルのみのため、他のソフトを使うかわからなくとも単体で購入する事はできない。これは、割りきって考えればアルバムの最終仕上げ段階のみあれば良いとも考えられるから、例えば1日5,000円(それは高いと思うけど)だとしても、今後の使用頻度が低いのであれば十分得なケースも多そうだ。

いくら映画好きでも、観る映画全部のDVD/BDを買うという人はあまりいないはずで、1回(またはレンタル期間)という視聴の機会にお金を払うのが普通だ。「道具」である音楽用ソフトも、そういった観点での使い方が出来ると非常に色々なものを使い易くなる。

今は「モノが売れない、お金を使わない」と言われるが、それは「所有のために」モノを売ろうとしている観点のみからの近視眼的な見方だ。コレクター的な楽しみを除けば、多くの場合人は「DVDを所有したい」のではなく「映画を観たい」のであって、モノの所有を伴わない「体験」の消費意欲は決して低くは無いと思う。

そういった選択肢があってこそ、逆説的に、厳選されたモノを所有する喜びや満足度も大きくなり、提供側としては自分のビジネスモデルが「体験を売りたい」のか「(付加価値のある)モノを売りたい」のか切り分ける必要がある。クラウド化は、モノの衰退ではなく、モノとして存在する価値のある商品にとっては逆に価値が高まるような流れとも考えられる。

今回は脱線が長くなったが、これから何回か、クラウドVSTの展望や、成功するためのポイントなどをあれこれ考えてみよう。弊社も参入したいぞ!
もうすぐ次の号が出る時期になってしまうが、現在売っているDTMマガジン2010年3月号では、自分の連載「フリーウェア・コンシェルジュ」の特別編と、チップチューンの製作記事の2つの特集を書かせて頂いた。

チップチューンアーティストのSaitoneさんへのインタビューでは、誌面ではまとめた形になっているが、編集長、担当編集者、そして私の3人でお話を伺った。今までチップチューンを中心に活動されている方とあまりお会いした事が無かったので、誌面には載っていない部分も含めて大変内容の濃い一時を過ごさせて頂いた。

何を隠そうというか、私も「チップ音楽」、つまり80〜90年代初期のゲームミュージックから音楽を始めたクチなのだが、Saitoneさんはテクノ方面への興味から「チップ」のサウンドにたどり着いたそうで、道程が全く逆なのが興味深かった(90年代のデトロイトテクノが好きという点も共通していたけど)。

今回の記事では、以前連載でも紹介した、初代ファミコンの音源をシミュレートしたフリーウェア「Famitracker」を使っている。2年程前に同じような特集をやった時にはWindows内蔵のGS音源を使ったので(あれはあれで面白い内容になったと思うが)、今度はまさにドンピシャのツールをご紹介できた形だ。相当他のDTM用ソフトと違う操作体系なので(トラッカーという種類のソフトで、逆にそちらを知っている人には馴染みやすい)少し戸惑うかもしれないけど、電子音好きの方は是非講座を読んでチャレンジして頂きたい。

さて、チップチューンというとまさに今回やったような「ピコピコ」音が主流だけど、個人的にはそれにFM音源とロービットのPCMが加えられた80年代中期〜後半位のサウンドが一番ぐっとくる。特に、この時期のナムコのゲームは(ゲーム自体もそうだけど)神がかったような素晴らしいサウンドで彩られている。

ファミコンサウンドはCMYKYMCK(←書き違えのご指摘を受けました。失礼しました!)など既に世界観を確立しているアーティストがいるけど、このあたりのサウンドの風合いを活かした楽曲を作れるタイミングを、密かに狙い続けている。是非とも今年中くらいには何かの場でやってみたい。

上記のサウンドを聴いてみたい人は、ニコ動あたりで「妖怪道中記」「サンダーセプター」「ローリングサンダー」「源平討魔伝」(←個人的なオススメの羅列)といったキーワードを検索してみると、多分聴く事が可能だと思う。ナムコのオールドゲームの曲はiTunesとかでも配信しているけど、ここに挙げた珠玉の作品はまだ売られてないので、是非ラインナップに加えてもらいたい!出来れば、オリジナル基板からの新録で!

昨日の3DTVの話の続きだけど、ほんと本一冊分位続いてしまいそうなので一点だけ。

まず3DTVだけど、既に一番の欠点と言われるようにゴーグルの装着が必要だし、コンテンツも乏しい。大体、360度のホログラムになるなら別だけど、今の3DTVは平面が立体視できるだけ。ちょっと表現の一要素が増えただけだ。例えるならハンバーガーとチーズバーガーに加えてテリヤキバーガーも増えましたという程度。

しかし、家電メーカーと放送業界に本当に必要なのは、例えるなら「今までは店内でしか食べられなかったのが、ドライブスルーでテイクアウトもできるようになりました」という事。ニーズがあってサービスが生まれるのか、サービスによりニーズが創出されるのか、どちらにせよ、人々のライフスタイルに密接した上での自らの変化だ。AppleのiPod/iPhone/iPadなんかの魅力は、商品の機能・性能自体より、こういった部分にある。

2つのハンバーガー屋が生き残りを賭けているとして、バーガーを一種類だけ追加した店と、テイクアウト/ドライブスルーを始めた店と、どちらに未来がありそうか。そこに着目しないと、もはや大企業だって一寸先はどうなるかわからない。

小泉元首相以来、やたらと「改革には痛みを伴う」と喧伝されるけど、な~んも変えずにアイタタタな事になる方が余程辛いのではないかなあ。

またまたオリンピック系の話題。

今日ふと思ったのだが、今回の五輪期間中は「大画面のテレビを買ってオリンピックを観よう!」というCMをあまり見ない気がする。北京の時はかなり喧伝していたように思うのだけど、今回は冬季という事を差し引いてもテレビの宣伝が大人しい。

そして一つ「これじゃないか?」という理由を思いついた。メーカー側の本音は、今年これから続々リリースされる予定の(曰く、社運のかかった)「3D対応TV」を買ってほしくて、値崩れの激しい現在の大画面テレビを買われてしまう事で購入需要のパイが減る事を恐れているんじゃないか?

邪推のようだけど、案外何%かはこういう事がありそうだ。ただでさえ来年地デジ以降を控えて、もっと狂ったような宣伝があっても不思議で無いタイミングなのに。

しかし、3DTVほど提供側(家電メーカー&放送機器メーカー)とユーザーのニーズがちぐはぐな例も珍しいと思う。大分報道もされているので3DTV自体の認知度はそこそこあると思うが、さていつ買おうかと手ぐすね引いている人は、新し物好きの中にもどれぐらいいるか。「アバター」がヒットしても、あまり状況は変わらないと思う。

逆に提供側は、もう全TVが3D化するのが規定路線のような雰囲気だ。昨年のInter Bee(毎年11月に幕張で開かれる、業務用の国際的な放送機器展示会)では、全体的に面白いトピックに欠ける中、3D関連の機材ばかりが大プッシュされていた。例えばSONYのブースでは、巨大スクリーンにサッカー競技や会場のリアルタイム撮影をソースにド派手なデモを行っていたが、不思議な程「未来」を感じないんだなあ、これが。

ここら辺の話題はすごく長くなるので何回かに分けて書こうと思うが、このままでは(少なくとも日本では)サラウンド音響の「ホームシアター」の二の舞は避けられない雰囲気が漂っている。きっとそれぞれのメーカーの現場でもそう思っている人がいっぱいいると思うんだけど、中々会社のプロジェクトになってしまうと引くわけにもいかない所にはまってしまうのもわかる。

というわけで、次回に続く。

今日は一日テレビも人々も女子フィギュア(もちろん萌え人形じゃなくスケート)。本当に歴史に残る凄い演技の応酬だったが、こういった「音楽に合わせて演技する」系の競技を見ると思い出すのが、2004年アテネオリンピックでのある出来事。

その時私は女子シンクロの中継を友人と観ていて、優勝候補のロシアチームの演技中の事。突然曲が止まってしまった。PAの仕事もやる身としては、人事ながら、現場担当者の心寒さが想像できて胃が痛くなりそうな感覚に。

だがしかし、本当の衝撃は曲が止まった事自体ではなかった。

カメラが切り替わると、そこには安っぽいミニコンポみたいなのからCDを取り出し「あれ~、おかしいなあ…」という顔で盤面を見るおじさんの姿…。文字通り「天下の」オリンピック会場で、演技の命綱であるBGMをそんなもんで出していたのか!

個人的な経験でも、CDというのは(特に-Rが普及してから)送出に使うとトラブルの種になりやすい。盤のコンディション以外にも、出先のプレーヤーの状態もわからないし、振動で飛んでしまう事もある。私も過去一度、芝居の音響中に誤って手をプレイヤーにぶつけてしまい、劇中歌のオケを止めてしまった事がある。それ以降、原則として上演中の素材出しにCDは極力使わない事にしている。

では何を使うの?というと、芝居の音響の場合、ノートPC+DAW(普段から使っているCubase)を使い、オーディオトラック等に楽曲等の長尺モノ、ソフトサンプラー(HALion)に単発のSEなどを仕込み、鍵盤でトリガーして出している。シビアなタイミングにも対応できるし、素材の入れ替えもしやすいので良い事づくめだ。

リアルタイムの送出にパソコンを使うのにアレルギーのある人も多いけど、信頼できるインターフェースを使い、余計なソフトを外すなどきちんと対策をすれば、少なくともCubaseは非常に安定した動作をしてくれる。過去にあったトラブルは、操作ミスと人為的な設定ミスだけで、本番中に原因不明のトラブルなどはほぼ皆無という状況だ。

DAWを安定させるコツというのは、常駐ソフトを外したりといったいくつかの定番のTipsがあるが(雑誌でもしょっちゅう書いてるけど、そのうちこちらにも書いてみよう)、音響に使っているマシンもほぼ定番の対応しかしていない。逆に言えば、イレギュラーな対策が必要なシステムでは怖くてそういった用途には使いにくい。

アテネのシンクロでも、こういう対策をしておけば事故はおきなかったのでは…としみじみ思う。


本日発表されたVOCALOIDの新エンジン「VOCALOID-flex」。コンシューマ向けには提供されずコンテンツメーカーへのライセンスという点が物議をかもしているようだが、大部分のライブラリで声の提供者が声優という事を考えると、本丸の商品である話し声を無尽蔵に作られる状況は避けたい所だろう。

しかし、現段階でアナウンスされているVOCALOID-flexのライセンス先はゲーム向けのようだが、それこそ「声優のギャラの圧縮」という非常に面白みの無い使われ方がしないかと危惧してしまう。

VOCALOIDは、一応「音楽作成用ソフト(楽器)」という体裁だが、商品の核となるのは(VOCALOIDという)ツールではなく、(初音ミク等の)コンテンツを売るというビジネスモデルになっている。その意味では(誤解を恐れずに言えば)VOCALOIDを使った作品は広い意味では全て「二次創作」的な性格を持つ事になり、そこが音楽を生活の糧とする人間には使いづらい部分でもある。

VOCALOIDが真にクリエイターにとってのツールへと昇華するには、ボイスライブラリを作成する術が一般に開放されるか否か、というのが一つの大きなポイントとしてあると考える。しかし、それは前述のビジネスモデルの崩壊を意味するので、ちょっとやそっとではその状況は訪れないだろう。むしろ、UTAUを始めとするオープンなツールが複数存在する今となっては、バーチャルボーカル/スピーチは完全に二つの路線に分かれて行く事が決定づけられたとも言えそうだ。

VOCALOIDはニコ動等で多くの人が「作り手」となる事によりブームが加速されたものであるから、そこに矛盾というかジレンマというか、ビジネスモデルのある種の限界のようなものも見え隠れしている気がする。

flexの今後について、純粋にテクノロジーへの興味としては人間と遜色ない表現力を持つスピーチエンジンがおいおい出現するのを見てみたい。しかし、繰り返しになるが、それが人件費の抑制という観点ばかりクローズアップされたら、本当につまらん。

バーチャル音声については、VOCALOIDでやったら色々怒られそうな位面白い事を、UTAU等で、それも多少でも採算が成り立つようなベースでやって行く、それがうちの当面の陰謀野望だ。

※ちなみにこのブログの左側に貼ってある「縁起物ジェネレータ」は、UTAUを使って打ち込み方で無理矢理話させたもの(通称hanasu)。どうせゲームとかに使うなら、現ボカロを無理矢理喋らせた声で全編構成したような力技を見てみたいよ。

筆者プロフィール
音楽・映像制作、原稿執筆、レクチャー等のお問い合わせ&ご依頼は、こちらのフォームからお寄せください。


大須賀 淳(おおすが じゅん)
1975年生 福島県出身

音楽・映像制作「株式会社スタジオねこやなぎ」代表取締役。音楽・映像コンテンツ作成、雑誌「DTMマガジン」他での記事執筆、After Effects等映像系ソフトの講師も行っています。

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