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2024 .04.24
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  日本における電子機器を使用した音楽の、終戦直後からデジタル時代初期までの歴史を、数々の史料と重要人物への取材で綴った超ド級ボリュームのルポタージュ。追記・改定の行われた現版の刊行(2001年)からも既に10年近くが経つが、いまだに内容、情報量共にトップクラスの充実度を誇っている。

  本書の特徴は、現代音楽の一環としての電子音楽から、YMOやテクノ御三家(P-MODEL、ヒカシュー、プラスチックス)といったポップスまでカテゴリに囚われずに扱いながら、それらが時代の潮流として直接的・間接的に関わり合いながら進化して行く様が感じられる所だ。読んでいると、電子音に魅せられた表現者達の40年近くに渡る群像劇を観ている気分になって来る。

  物語(あえてこう呼ぼう)のキーポイントとなっているのが「NHK」と「大阪(1970)、つくば(1985)の二度の万博」、そしてエレクトロニクスとポピュラー音楽の沿革だ。大まかにその流れを追ってみよう。

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1955年、現代音楽の制作を目的にNHKに国内初の電子音楽スタジオが作られる。そのNHKで番組用の音楽(有名な「きょうの料理」のテーマ等)を多数手がけていた冨田勲は、大阪万博(パビリオン演出に電子音も多数使用)の仕事先で、Moogシンセを使ったアルバム「スイッチド・オン・バッハ」と出会い、その後様々な騒動の末、ビルボード1位を獲得したアルバム「月の光」を完成させる。

冨田のアシスタントだった松武秀樹は、その後細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏が結成したYMOにマニピュレーターとして関わり、一大テクノポップブームを巻き起こす。ブームの中で平沢進率いるP-MODELを始めとする新世代のグループが数多く台頭。その中で、最新のデジタル楽器フェアライトCMIをいち早く導入したグループTPOのメンバーだった安西史孝は、音声合成なども駆使しながらつくば科学万博のテーマを手掛ける。そして電子楽器は、MIDIやパソコンを中核としたデジタルの時代へ…
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…と、限りなくざっくりと要約してみたが、これでも内容の1/100もなぞれていない。もちろんストーリー中には国内外のシンセの名機がどっさりと登場するし、関連するレコード等も多数紹介されている(本書刊行後、CDで再発されたものも多い)。

そしてもう一つ、本書には付録としてCDが付いており、これがまた非常に貴重な内容となっている。P-MODELの代表曲の一つ「美術館であった人だろ」などポピュラーなものから、様々なアーティストの未発表音源まで非常に多彩なラインナップとなっている。単体CDアルバムとして3,000円位で売っていても迷わず欲しくなる程の内容だ。

この原稿を描いているのは2010年。本書で扱われている最後の時代から既に20年以上が経過した。その後のデジタルシンセ最盛期、シンセやエフェクターのソフト化の流れ、そしてVOCALOID等バーチャルボーカルの登場と、本書を上巻とすれば「下巻」が書けそうな位時代は激しく変化して来た。是非、デジタル時代を辿った本書のような作品を読みたいと思うと同時に、僭越ながら電子楽器に関する文章を書いているもののはしくれとして、自分がそれを書いてみたいという野望もコッソリ抱いていたりするのであった。
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大須賀 淳(おおすが じゅん)
1975年生 福島県出身

音楽・映像制作「株式会社スタジオねこやなぎ」代表取締役。音楽・映像コンテンツ作成、雑誌「DTMマガジン」他での記事執筆、After Effects等映像系ソフトの講師も行っています。

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