2025 .01.31
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
けっこうあちこちでリンクされている動画なので見た事のある人も多いかもしれないけど、これは海外ドラマの制作におけるキーイング(ブルーやグリーン一色のバックを切り抜いて合成する処理)の実例を集めたもの。日本でもヒットしたドラマが多いので、まったく気付かずに本編を観ていてびっくりした方も多いかと思う。
一番特徴的なのは、キーイングの処理が使われているのは「現実でも十分撮影可能」なシーンが多いという事だ。合成というと恐竜が出てきたり、宇宙を漂ったりという画面を連想するが、ここではあくまで「必要なカットを得る」ための手段としてさりげない活用がなされている。
動画系の撮影に参加した事のある方ならわかると思うが、「ごく当たり前の風景」を撮影するのはものすごく大変な事だ。まず天気はこちらの思惑などかまってはくれないし、街中であれば道路使用許可や交通規制なども必要になる。予算はもちろん、放映スケジュールが決まっているTVシリーズでは、文字通り死活問題だ(特に米国では、役者以外にスタッフのユニオンの力も強いから、無闇やたらと「待ち」の時間も増やせないのだろう)。
ツールは、それを「使いました!」という事が宣伝のタネとなるうちはまだ未熟。それが使われている事を予想だにしなかった部分にさりげなく使われるようになって、初めて一つの成熟点と言えるようになる。そして成熟点に達して初めて「手法としてのローファイ」を使う事が出来るようになる。
音楽で「ローファイ」という言葉が流行ったのはもう十数年も前だけど、その頃はCD並の音質のサンプラーがアマチュアでも十分手に入る価格となり、打ち込みオンリーでも「リアルな生音」を比較的簡単に入れられるようになった時期だ。そうした時期に、1〜2世代前の音質の荒いサンプラー(テイ・トウワなんかが使ったSP-1200が有名)を意図的に使う手法も台頭して、今やそういった意味での音質は、所有機材などではなく「作家性として」使い分けるものとなっている。
今、バーチャルボーカルの分野は(異論はあるだろうけど世間の認識として)「初音ミク」が代名詞的な存在であり、それを使っている事を商品価値とする事も(まだぎりぎり)可能な段階だ。これが例えば、バーチャルボーカルがCMソングなんかに(全くそれと気がつかない形で)使われる段階になったら、どんな状況が生み出されるだろう。現段階のVOCALOIDやUTAUの表現力の限界を、逆にものすごい武器として使える状況はいずれ間違いなくやってくる。
そういった成熟を生み出すのに最も必要なのは、「100の勝ち馬に乗る」行為ではなく「1つのチャレンジ」だ。今のように社会全体の停滞が囁かれる時期というのは、言い方を変えれば「失敗するチャンス」とも言える。皆がイケイケの時に一人失敗するのはちょっと辛いけど、全体が「失敗して当たり前」という意識になっている時期こそ、トライ&エラーで経験値やデータをためて行くにはもってこいの時期だ。
これは「ポジティブシンキング」とかそういうちょっとアレなもの(笑)ではなく、こんな好機に何もしないのはとっても損な事ですよ。
PR